LLCコンバータ
第3回 出力特性編
第3回の記事ではLLCコンバータの出力特性について解説していきます。
LLCコンバータの特性解析でよくもちいられる近似式から、近似式と実際の違いについて紹介していきます。
本記事には、サンプル回路もありますので、是非ご利用ください。
LLCコンバータの特徴や、強み弱みなどについては、第1回で紹介していますので、併せてご覧ください。
それでは始めましょう。
出力特性について
第1回でご紹介した通り、LLCコンバータは周波数変調制御によって、以下のような出力特性となります。
しかしながら、以下の[近似式-シミュレーションの比較]に示すように、特性の近似式とシミュレーションの結果では、以下の様に特性が異なります。
なぜ異なるのか、その原因を紹介していきましょう。
解析条件
まず初めに、近似式、シミュレーションなどを行うための条件をそれぞれ以下に示します。
出力特性の近似
出力特性を考えるためには、以下の正弦波近似等価回路を用いて計算式を導出します。
具体的な導出方法は以下の書籍に詳しく記載がありますので、こちらでは割愛して要点のみを記載します。
参考文献
平地 克也, “DC/DCコンバータの基礎から応用まで“, 電気学会 (2018), ISBN 9784886863119
この近似のポイントは、入力をスイッチングによる矩形波ではなく、正弦波として近似することで、複素数計算で簡単に式を立てられることにあります。
この結果を用いて、図中の近似式結果を得ています。
近似式が合わない範囲
さて、上記の近似式の結果に、シミュレーション結果を重ね合わせると冒頭の[近似式-シミュレーションの比較図]のように結果に差が出てしまいます。この原因は主に共振電流波形が正弦波状にならないことで起こります。
共振電流が正弦波にならない範囲
共振点frよりも動作周波数fswが低い範囲では、二次側の電流波形が不連続となり、高い範囲では正弦波の途中で切られるような波形となり、どちらの場合も正弦波状ではなくなってきます。
このため、近似式との誤差が大きくなりシミュレーションとの差があらわれます。
スイープ解析
Scideamではスイープ解析によって、動作周波数をスイープさせたときの結果をXYプロットに簡単に表示させることができます。
また、第2回の記事で取り上げたように、デッドタイムを簡単に設定することが可能なDriver素子によって、周波数を変更してもデッドタイムを固定値で与え続けることが可能です。
本連載記事で使用するサンプル回路を以下からまとめてダウンロード可能です。
是非ご利用ください。
回路モデルは「LLCConverter_Sweep.scicir」です。
本モデルは、パワエレ向け高速回路シミュレータScideam(サイディーム)で動作可能です。
本記事のモデルは以下からダウンロードしてください。
サンプル回路を用いて、10kHz~300kHzまでをdivision 30程度で解析してみましょう。
既にシミュレーション条件を設定してありますので、シミュレーションモードをSweepに変更し、シミュレーションしてください。
詳しいスイープ解析の方法は以下をご覧ください。
▼スイープ解析ヘルプページhttps://www.smartenergy.co.jp/support/ScideamArticles/help/scideam_help/simulation/sweep/sweep/
まとめ・お勧めの設計方法
ここまで紹介した通り、LLCコンバータは出力特性を正弦波近似によって得ることができ、また、その結果はシミュレーションとは異なるということをお伝えしました。
以上を踏まえると、お勧めの設計方法としては、
- 正弦波近似式を用いて、仕様にあうパラメータをおおまかに決める
- シミュレーションでスイープ解析を行い、各素子の抵抗分、デッドタイムや寄生容量、ダイオードの影響など、さらに細かいパラメータを入れた時に仕様を満足できるかどうか確認する
という流れが良いと思います。
さらに詳しく、各出力の損失解析、出力効率の解析、最適設計などを行う場合、弊社でも解析サービスをご用意しておりますので、是非お気軽にお問い合わせください。
参考文献
[1]平地 克也, “DC/DCコンバータの基礎から応用まで“, 電気学会 (2018), ISBN 9784886863119
[2]東芝アプリケーションノート, “共振回路およびソフトスイッチング(LLCコンバータおよび共振形コンバータ)”,
https://toshiba.semicon-storage.com/info/docget.jsp?did=68572
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