GaNモデルのシミュレーション比較
第2回 ダブルパルステスト回路の比較
前回は、LTspiceとScideam(サイディーム)が抵抗負荷回路におけるGaNデバイスのスイッチング速度を概ね再現できていることが確認できました。
今回はメーカーのサンプル回路を元に、誘導負荷を用いたダブルパルステスト回路モデルを作成し、双方のシミュレーション波形から、スイッチング損失を計測し結果を比較してみます。
Scideamの回路モデルはサンプルもございますのでお試しください。
第1回では、ScideamのGaNモデルとLTspiceモデルを使用したスイッチング速度や損失のシミュレーション結果を比較していますので、併せてご覧ください。
それでは始めましょう。
ダブルパルステストとは
ダブルパルステストは、パワーデバイスの特性を評価する際に一般的に用いられている手法です。ハーフブリッジ回路に誘導負荷と入力電源を接続した図1のような基本回路で測定を行い、誘導負荷と電源の値を変更することで任意の条件のテストを行うことができます。通常、試験対象となるデバイスはローサイドに接続し、ハイサイドスイッチにも同じデバイスを接続します。
ここでは、メーカーのサンプル回路 [1] を元にドライブパルスと入力電源の部分を簡略化し、スイッチの特性を調査するための必要最小限のモデルを採用しています。
LTspiceのスイッチにはデバイスに熱モデルやパッケージ内部の寄生インダクタンスを含まないLevel 1のモデルを使用しています。一方、Scideamのモデルは回路上のソース端子にインダクタを接続していませんが、素子パラメータとして同値の内部寄生インダクタンスとして設定されています。
図2は双方のスイッチング時の波形を比較した画像です。
【図2】ダブルパルステスト回路のスイッチング波形
ダブルパルステストでは、2周期分のスイッチング波形を解析しますが、この図においてターンオン波形は2波目、ターンオフ波形は1波目の波形を示しています。この結果から分かるように双方のシミュレータのスイッチング波形はよく一致しているので、引き続き、スイッチング損失を比較してみましょう。
スイッチング損失の計測
Scideam とLTspice双方で図2で得られたドレイン電流(Id)とドレイン・ソース電圧(Vds)の積をスイッチング損失(Psw)として演算機能を使用してプロットし、その積算値を記録します。図3はその波形を示しており、双方のシミュレータの波形はよく一致していることが分かります。
図4は1mA~30Aまでのターンオン時とターンオフ時の計測値を加算した結果をグラフにしたものです。
この図から分かるように、ダブルパルステスト回路におけるScideamとLTspiceのスイッチング損失のシミュレーション結果は非常によく一致していると言えます。
本連載記事で使用するサンプル回路をダウンロード可能です。
是非ご利用ください。
回路モデルは「SwitchingLossTest_GS66508T.scicir」です。
本モデルは、パワエレ向け高速回路シミュレータScideam(サイディーム)で動作可能です。
本記事のモデルは以下からダウンロードしてください。
まとめ
今回の記事ではダブルパルステスト回路を作成し、LTspiceとScideamのスイッチング損失を比較しました。双方のシミュレーション結果はグラフに示した通り驚くほど一致していました。
次回はDCDC降圧型コンバータ回路のモデルを作成し、もう少し実用的なシミュレーション例について比較してみたいと思います。
参考文献
[1] “GN008 Application Note LTSpiceを用いたGaNのスイッチングロスのシミュレーション“
GaN Systems Inc.
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